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大阪地方裁判所 昭和59年(わ)2696号 判決

事件

主文

一、被告人を懲役二年に処する。

一、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

一、押収してある申込書写一一通(昭和五九年押第八二七号の1ないし8、10、11、12)の各偽造部分は、いずれもこれを没収する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、新経済出版株式会社の代表取締役であるが、

第一同社が経営不振に陥つたため同社従業員佐藤武とともに架空の「中小企業税務研究会」「株式会社企業管理協会」「実務経営協会」という出版社名を利用して各種の企業・団体に対し、右各出版社が発行する税務、経営関係資料の定期購読料等を請求する架空の請求書等を郵送し、右代金を被告人らの指定する銀行預金口座に振込入金させて右金員を騙取しようと企て、被告人は右佐藤と共謀のうえ、

一  別紙犯罪事実一覧表(一)記載のとおり、昭和五八年一二月上旬から同五九年三月中旬にかけて二一回にわたり、あらかじめ作成した同表欺罔手段欄記載の事項を内容とする架空の請求書合計二一通中三通(別紙犯罪事実一覧表(一)番号1ないし3、以下番号のみを略記する。)を大阪市東区北久宝寺町二丁目二〇番所在のイセトビル前郵便ポストに、一八通((一)の4ないし21)を同町一丁目二五番所在の北久宝寺郵便局前郵便ポストに、各投函し、宮城県古川市十日町三番一七号所在の株式会社ホテル古川ゴールデンパレスほか二〇社宛郵送し、同五八年一二月六日頃から同五九年三月一五日頃にかけて、それぞれ右各企業、団体に到達させ、寺崎誠二ほか二〇名に対し、真実は「中小企業税務研究会」「株式会社企業管理協会」が税務、経営関係などの雑誌や資料を発行しておらず、従つて同社らにおいてこれを購読した事実がないのに、あたかもその事実があり正当な請求であるように装つて会費購読料名下に金員の支払いを求め、同人らをしていずれもその旨誤信させ、よつて同五八年一二月二一日から同五九年四月三日までの間、二一回にわたり各取引銀行を通じ、大阪市阿倍野区阪南町五丁目二二番三号所在株式会社三井銀行西田辺支店の中小企業税務研究会名義の被告人らの普通預金口座に合計四八万六〇〇円((一)の4ないし18)を振込入金させ、同区阿倍野筋一丁目五番三八号所在の株式会社富士銀行阿倍野橋支店の右研究会名義の被告人らの普通預金口座に合計一二万一二〇〇円((一)の1ないし3)を振込入金させ、同市東区南久太郎町二丁目五番一号所在の株式会社住友銀行船場支店の株式会社企業管理協会名義の被告人らの普通預金口座に合計七万三四〇〇円((一)の19ないし21)を振込入金させ、もつて合計六七万五二〇〇円の金員を騙取し、

二  架空の請求書に添付する申込書を偽造しようと企て、いずれも行使の目的をもつて、ほしいままに、同五八年八月五日頃から同年一一月下旬頃にかけて、同市東区北久宝寺町二丁目五〇番所在の本町和光ビル六階の新経済出版株式会社事務所において((二)の1ないし7)、次いで同五九年一月一二日頃から同年二月二〇日頃にかけて、同区南久宝寺町二丁目七一番所在の船場双葉プラザビル八〇三号の新経済出版株式会社事務所において((二)の8ないし10)別紙犯罪事実一覧表(二)記載のとおり、そのころ入手していた鷹巣町商工会ら各会社及び団体作成名義の雑誌購読料等の支払証明書を利用し、その社名あるいは団体名のゴム印等が押捺されている部分を複写し、これを申込書用紙に貼布し、会費、購読申込金額欄及び申込期間などに各数字判を押印し、宛先として実務経営協会、中小企業税務研究会と刻したゴム印を押印して、再度複写機にかけて、同会社等が、実務経営協会、中小企業税務研究会にいずれも同表偽造申込書の内容欄記載の雑誌、資料などの購読を申し込む旨の申込書写し合計一〇通(昭和五九年押第八二七号の1ないし4、6、7、8、10、11、12)を作成し、もつて同会社等作成名義の私文書一〇通の偽造を遂げ(但し、(二)の8については、松岡縫製株式会社新庄工場の署名なし)、更にその会費、購読料を請求する旨の架空の請求書合計一〇通を作成して、同五八年八月上旬頃から同年一二月初旬にかけて七回にわたり、前記イセトビル前郵便ポストに右偽造の各申込書の写し七通((二)の1ないし7、同押号の1ないし4、8、10、12)を右各請求書とともに投函し、同五九年一月中旬頃から同年二月二〇日頃にかけて三回にわたり、前記北久宝寺郵便局前郵便ポストに右偽造の各申込書の写し三通((二)の8ないし10、同押号の6、7、11)を右各請求書とともに投函し、秋田県北秋田郡鷹巣町住吉町一二番一八号の鷹巣町商工会ほか九か所宛郵送し、同五八年八月上旬から同五九年二月二一日頃にかけてそれぞれ各会社及び団体に到達させて、同商工会事務局長河田治郎ほか九名に右申込書写しは真正に作成されたもののように装って行使し、同人らに対し、真実は実務経営協会、中小企業税務研究会が経営、税務関係などの雑誌や資料を発行しておらず、右団体等にこれらを販売した事実がないのに、あたかもその事実があり正当な請求であるように装つて、会費、購読料名下に金員の支払いを求め、同人らをしていずれもその旨誤信させ、よつて、同五八年八月一〇日から同五九年二月二九日までの間、一〇回にわたり同人らから前記株式会社富士銀行阿倍野橋支店の中小企業税務研究会名義の被告人らの普通預金口座に合計一九万一、四〇〇円((二)の4ないし7)を振込入金させ、前記株式会社三井銀行西田辺支店の右研究会名義の被告人らの普通預金口座に合計一二万四〇〇〇円((二)の8ないし10)を振込入金させ、大阪市北区曽根崎二丁目一六番一九号所在の株式会社大和銀行梅田支店の実務経営協会名義の被告人らの普通預金口座に合計一八万五、四〇〇円((二)の1ないし3)を振込入金させ、もつて合計五〇万八〇〇円の金員を騙取し、

三  同五八年一一月中旬頃、前記本町和光ビル六階の新経済出版株式会社事務所において、行使の目的をもつて、ほしいままに、そのころ入手していた「いづみや株式会社」作成名義の自社宛の雑誌購読料等の支払証明書を利用し、その社名のゴム印等が押捺されている部分を複写し、これを申込書用紙に貼布し、会費、購読申込金額欄及び申込期間などに各数字判を押印し、宛先として中小企業税務研究会と刻したゴム印を押印して、再度複写機にかけて、同会社が中小企業税務研究会に同五七年六月から同五八年五月まで同会発行の雑誌資料など(会費、購読料四万八、〇〇〇円)の購読を申し込む旨の申込書写し一通を作成しもつて同会社作成名義の私文書一通(同押号の5)の偽造を遂げ、更にその会費、購読料四万八、〇〇〇円を請求する旨の架空の請求書一通を作成して、その頃、前記イセトビル前郵便ポストに右偽造にかかる申込書写しを右請求書とともに投函し、同市西成区花園南一丁目四番四号のイズミヤ株式会社宛郵送し、同五八年一一月二〇日頃、同会社に到達させて同会社総務部長の合田四郎に右申込書は真正に作成されたもののように装つて行使し、同人に対し、前同様装つて会費、購読料名下に金員の支払いを求め、同人をしてその旨誤信させて指定預金口座に右金額を振込入金させて金員を騙取しようとしたが、同人に右偽造申込書の作成名義に不審を抱かれたためその目的を遂げず、

四  昭和五九年二月末頃、あらかじめ作成した株式会社企業管理協会の経営関係資料に関する同五七年一〇月から同五八年九月までの会費、購読料二万四、八〇〇円の請求を内容とする架空の請求書一通を前記北久宝寺郵便局前郵便ポストに投函して、愛媛県伊予三島市豊岡町豊田七八の一番地の豊岡農業協同組合宛郵送し、同年三月初旬、同組合に到達させ、更に、右請求の証拠資料とするため、その頃前記船場双葉プラザビル八〇三号の前記新経済出版株式会社の事務所において、行使の目的をもつて、ほしいままに、そのころ入手した同組合作成名義の右請求に対する確認文書を利用し、その組合名のゴム印が押捺されている部分を複写し、これを申込書用紙に貼付し、会費、購読申込金額欄及び申込期間などに各数字判を押印し、宛先として株式会社企業管理協会と刻したゴム印を押印して、再度複写機にかけて同組合が右会社に前記期間その発行する雑誌、資料など(会費、購読料二万四、八〇〇円)の購読を申し込む旨の申込書写し一通を作成し、もつて同組合作成名義の私文書一通の偽造を遂げた上、その頃前記郵便ポストに右偽造にかかる申込書写し一通を投函し、前記組合宛郵送し、その頃、これを同組合に到達させて、同組合管理金融部長鈴木利政に右申込書は真正に作成されたもののように装つて行使し、同人に対し、真実は「株式会社企業管理協会」が経営関係などの雑誌や資料を発行しておらず、従つて同組合にこれらを販売した事実がないのに、あたかもその事実があり正当な請求であるように装つて会費、購読料の支払いを求め、同人をしてその旨誤信させ、よつて、同月九日、同人から前記株式会社住友銀行船場支店の株式会社企業管理協会名義の被告人らの普通預金口座に二万四、八〇〇円を振込入金させてこれを騙取し、

第二昭和四九年四月三〇日から同五七年三月一〇日までの間大阪変圧器株式会社(代表取締役小林啓次郎)の株式を五株保有し、同社の株主であつたが、同社から広告料の名目で賛助金を同四九年五月七日頃から同五七年八月二五日までの間得ていたところ、同年一〇月一日施行の同年法律第七四号による改正後の商法下においてはこれが禁止されたため、その復活を同社総務部株式事務等担当課長三好修に再三申入れ、右三好もこれを受けいれ、同人から飲食代名目で金員を提供する代りに今後同会社の株式の取得を差し控えて株主権の行使をしない旨の依頼を受け、その報酬として、同人が同会社の交際費から提供するものであることを知りながら

一  昭和五八年四月三〇日、大阪市住吉区我孫子東二丁目六番四号株式会社大和銀行我孫子支店のメンバーズスナックパル代表原口秀子名義の自己の普通預金口座に三万八、四〇〇円を振込入金させ、

二  同年七月三〇日、前記原口秀子名義の自己の普通預金口座に四万四〇〇円を振込入金させ、

三  同年一〇月五日頃、同市淀川区田川二丁目一番一号所在の前記大阪変圧器株式会社本店事務所一階の応接室において、前記三好から現金四万円の交付を受け、

四  同年一二月八日頃、同所において、同人から現金四万円の交付を受け、

もつて、情を知つて、株主の権利の行使に関し、同会社の計算において、財産上の利益の供与を受け

たものである。

(証拠の標目)〈省略〉

(検察官の主張に対する判断)

一  財物騙取罪を認めた理由

検察官は被告人ら指定の普通預金口座に各被害者が金員を振込入金した事実は、刑法二四六条二項に定める詐欺利得罪に該当し、同条一項に定める財物騙取罪は成立しないと主張する。

そこで検討するに前掲各証拠によれば、前判示のとおり、各被害者から被告人指定の各普通預金口座にそれぞれ振込入金のなされたことが認められる。

このように被告人の預金口座に入金がなされた場合においては、被告人は右振込入金された金員と同額の預金払戻請求権を取得するので同条二項に定める詐欺利得罪が成立することには異論の存しないところである。(大判大正一四年三月二〇日刑集四巻一八四頁、大判昭和九年一二月三日刑集一三巻一六三九頁)。

更に、判例は、郵便振替貯金口座(大判昭和二年三月一五日刑集六巻八九頁、大判明治四四年一二月一四日刑録一七輯二一八五頁)、当座預金口座(東高判昭和三六年一一月一四日高刑集一四巻八号五七〇頁)については、いずれも入金のなされた金員について犯人の自由支配下においたものとして財物騙取罪の成立を認めている。

そこで普通預金口座について別異に解すべき合理的理由が存するかが問題となる。確かに、当座預金口座については直ちに小切手資金として犯人において自由に処分できるので財物騙取罪が成立するが、普通預金口座については、犯人の排他的支配が及ばず、詐欺利得罪が成立するに過ぎないとの見解も存する。しかしながらもともと当座預金と普通預金とでは、各口座に振込入金がなされれば即時犯人において預金を引出せる点においては何らの径庭も存せず、結局両者においては犯人の自由な支配に属するかどうかにつき何等の差異も存しないことは明らかであるといわざるを得ない。

小切手資金として利用できるかどうかは、犯人の支配の有無に影響を与えるものではなく、これを区別の基準とすべき合理的理由は存しない。(最決昭和四三年三月二七日裁判集一六六号五三七頁は、本件と事案を異にし、右結論を左右するものではない。)

以上の次第で当裁判所としては、被告人指定の普通預金口座に振込入金させた所為は財物騙取罪にあたるものと解する。検察官主張の訴因と当裁判所の認定した事実との間には、事実関係には何らの変更も生じていず法律見解の相違に過ぎないので、訴因の拘束力に抵触しないことは明らかである。

二  有印私文書偽造、同行使を認めなかつた理由

昭和五九年一〇月二九日付け起訴にかかる同年(わ)第四七五九号被告事件の公訴事実中第二の別紙一覧表番号1は、

「被告人は、佐藤武と共謀の上、

第二 架空の請求書に添付するため、同五九年一月一二日ころ大阪市東区南久宝寺町二丁目一番地船場双葉プラザビル八〇三号の新経済出版株式会社事務所において、行使の目的をもつて、ほしいままに、そのころ入手していた松岡縫製株式会社の作成名義の雑誌購読料等の支払証明書を利用し、その社名のゴム印等が押捺されている部分を複写し、これを申込書用紙に貼付し、会費、購読申込金額欄及び申込期間などに各数字判を押印し、宛先として中小企業税務研究会と刻したゴム印を押印して、再度複写機にかけて同会社が中小企業税務研究会に偽造申込書の内容欄記載のとおり一か年分の同会発行の雑誌資料など(会費購読料四万八、〇〇〇円)の購読を申し込む旨の申込書写し一通を作成して偽造を遂げ、更にその会費、購読料四万八、〇〇〇円を請求する旨の架空の請求書一通を作成して、同年一月中旬ころ前記北久宝寺郵便局前郵便ポストに右偽造にかかる申込書写しを右各請求書とともに投函し、山形県新庄市大字鳥越字駒場一四八八番地の三九松岡縫製株式会社宛郵送し、同年一月中旬ころ右会社に到達させて、同社取締役林亘に右申込書は真正に作成されたもののように装つて行使し、同人に対し、前同様装つて会費、購読料の支払いを求め、同人をしてその旨誤信させ、よつて、同年二月二九日同人から前記株式会社三井銀行西田辺支店の中小企業税務研究会名義の普通預金口座に四万八、〇〇〇円を振込入金させて財産上不法の利益を得た。」

というのである。

そこで検討するに押収してある申込書写一通(昭和五九年押第八二七号の6)、林亘の司法警察員に対する供述調書、佐藤武の司法警察員に対する同年七月九日付け供述調書被告人の司法警察員に対する同年七月六日付け供述調書によると、前判示のとおり、被告人は佐藤武と共謀のうえかねて入手していた松岡縫製株式会社新庄工場作成名義の支払証明書のコピーを利用して同工場作成名義の申込書を作成しようと企て、昭和五九年一月一二日頃、前記新経済出版株式会社事務所において、行使の目的をもつてほしいままに右証明書の住所及び記名欄を切り取り、申込書用紙に貼付し、所要の事項を書き加えたうえ、これを複写機にかけてコピーをとり、前記申込書写一通(前同押号の6)を作成し、更に松岡縫製株式会社新庄工場宛の右申込書写に対応する請求書を作成し、同工場宛郵送し、同年二月二九日右申込書写を真正なものと誤信した同社から会費、購読料名下に金四万八〇〇〇円の振込入金を受けたことが認められる。

前記申込書写を検討するに、住所欄は鮮明にコピーされているのに対し、社名欄はコピーが不鮮明で「株式会社新庄工場」の部分はどうにか判読できるものの「松岡縫製」となるべき部分は、判読不可能であり、右文書自体からは文書の作成名義人が何人であるかは明らかではない。

思うに刑法一五九条一項に定める有印私文書偽造罪が成立するためには私文書自体に作成名義人の真正あるいは偽造の印章若くは署名が使用されていることが必要である。なるほど本件においては、真正の署名を利用して偽造行為がなされてはいるが、作成名義人を特定すべき部分が不鮮明で判読できず、一般人をして何人の名義を冒用したかが文書自体からは明らかとはいえず、結局同項に定める作成名義人の署名を使用したものには該らないことはいうまでもない。

そこで作成名義人の署名の使用を要しない同条三項に定める無印私文書偽造罪の成否について検討する。同項に定める私文書に該当するためには、文書の作成名義人の存する必要があるが、文書の作成名義人は、文書自体から明らかである必要はなく、文書の付属書類等から明らかになれば足りるものと解すべきである(大判大正一一年一〇月一七日刑集一巻五四八頁、大判昭和七年五月二三日刑集一一巻六六五頁)。

これを本件についてみるに、前記申込書写は、松岡縫製株式会社新庄工場宛の請求書と同封されて、同工場宛の封書により郵送されたものであり、これを受取つた林亘も同工場作成名義の申込書であることを疑わなかつた事実から考えると、右文書の作成名義人が松岡縫製株式会社新庄工場であることは明らかであり、同項に定める私文書に該当するものと解するのが相当である。

以上のとおり、当裁判所としては、有印私文書偽造同行使、詐欺の訴因について、無印私文書偽造同行使、詐欺の事実を認定するが、訴因の縮少認定の場合にあたるから、有印私文書偽造、同行使の点については、主文で無罪の言渡をしない。

(法令の適用)

被告人の判示第一の一の各所為は、いずれも刑法六〇条、二四六条一項に、判示第一の二(番号8を除く。)、第一の三、第一の四の各所為中、各有印私文書偽造の点は、同法六〇条、一五九条一項に、同行使の点は、同法六〇条、一六一条一項、一五九条一項に、詐欺の点は、同法六〇条、二四六条一項に、同未遂の点は、同法六〇条、二五〇条、二四六条一項に、判示第一の二番号8の所為中、無印私文書偽造の点は、同法六〇条、一五九条三項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、同行使の点は、刑法六〇条、一六一条一項、一五九条三項、罰金等臨時措置法三条一項一号に、詐欺の点は、刑法六〇条、二四六条一項に、判示第二の各所為は、いずれも商法四九七条二項に、各該当し、判示第一の二ないし四の各私文書偽造と同行使と詐欺、同未遂との間には順次手段結果の関係があるので、刑法五四条一項後段、一〇条により結局各一罪としていずれも最も重い詐欺罪、同未遂罪の刑(但し、判示第一の二の番号8の罪を除いては、短期に偽造有印私文書行使罪の刑のそれによる。)で処断し、所定刑中判示第二の各罪につき懲役刑を選択し、以上は、同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も犯情の重い判示第一の二の番号3の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役二年に処し、情状により同法二五条一項によりこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、押収してある申込書写一一通(昭和五九年押第八二七号の1ないし8、10、11、12)の各偽造部分は、判示第一の二、三の各偽造私文書行使の犯罪行為を組成した物で何人の所有をも許さないものであるから、同法一九条一項一号、二項本文によりいずれも没収することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(金山薫)

別紙犯罪事実一覧表《省略》

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